Baroque そんなにも綺麗な君だから、僕は汚してやりたくてたまらない。 彼女は同じ学年のグリフィンドール生。 透き通るように白い肌と、輝く金髪。そして、海のように青い瞳。 その真っ直ぐで汚れない瞳は、この世の醜いものなど一切知らないと物語っている。 僕とは正反対だ。 クッと、喉の奥で笑った。 真っ白で、数少ない本当に清廉潔白な人間。 「ねえ、?」 僕は、隣にいる彼女に微笑みかける。 いつものように、作り笑顔を貼り付けて。 「……なあに?」 は、少し頬を紅潮させながら微笑み返してきた。 その綺麗な瞳に僕を映しこんで。 「君は僕の事、好き?」 「………」 彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。 勿論、彼女が僕をどう思っているかなんて知っている。 以前に聞いたのだから。でなければ今、こんな関係になっていない。 でも、僕は意地悪だからね。わかるだろう? 「………うん……」 本当にか細い声。 恥ずかしがりやの彼女の精一杯の「好き」。 本当に汚れない君だからこそ、その言葉はこんなにも響くから。 「僕もだよ。」 そうやって僕は、今まで彼女を安心させてきた作り笑顔を見せる。 そうすると彼女は花のように微笑んだ。 眩しいくらいの笑顔。 綺麗な綺麗な、汚れなき微笑み。 頭の中で、声が響いた。 「バカな女…」 「え?…リドル、何か言った?」 きょとん、と見つめ返してくる彼女を見て僕は気づいた。 どうやら声に出していたらしい。 「何でもないよ…」 もう日常事である、僕の作り笑顔。 皆はそれに騙される。 「リドルの微笑んだ顔って、とっても綺麗ね。」 …君も、騙される。 自然と、口元には酷薄な微笑が浮かんだ。 バカな女。 何物にも染まっていない綺麗な君を、僕は汚してやりたくてたまらない。 闇に堕ちる姿は、さぞかし美しいだろう。 幸福の絶頂から、絶望のどん底へ突き落としてあげる。 僕ほど、君を愛している人間はいない。 「ねえ、ずっと……傍にいてね。」 懇願するような瞳。 「勿論だよ、。」 僕は、君を汚して壊して僕の世界へ引きずり込んでやりたいぐらいに愛しているから。 そして永遠に僕の世界に閉じ込めて、何処にも逃がさない。 「誰よりも君を愛しているから。」