月蝕

 

 

 

「何してるの?」

「…別に」
──言ったものの、瞳を開けて直ぐに少年の澄んだ瞳と打つかって…正直驚いた。
「寒くない、ルック?」
「…君の格好よりはマシだからね」
晩秋の風が、見下ろす少年の髪をさらさらと弄んで行く。
「…君がこんな所で遊んでていい訳?」
少年は
──ティオは少し眉を上げた。
「お互い様だよ」

言って微笑う。そのまま彼の隣に腰を下ろした。
──見下ろす月が、寂しそうに震えていた。

「…あれ」
暫くの沈黙。それを破ったのは、少年の呟きだった。

 

 

「月が欠けてるね」
僅かだが、つい先刻よりも更に月が欠けていた。
瞳を見張る少年を尻目に、ルックは小さく呟いた。
「…今日は月食だから…」
丘陵は既に、闇に呑み込まれていた。
「………」

少年が瞳を見開いてこちらに目を向けた。
「…何」
「…ルック、もしかして…」
本気で驚いている。
「これを見る為に、此処に居たの…?」
「………」
月明かりに照らされた所為かは判らないが
──ルックの顔に赤味が差した。
「………っ」
堪え切れずに吹き出した少年を小さく睨む。

「……何なんだよ!」
「御免ごめんっ…」

不機嫌そうに問うルックに、込み上げる笑いを堪えて答える。
ティオの目尻には涙すら浮かんでいる。
「だってルックがそんな事考えるなんて思ってもみなかっ…」
肩を震わせて笑う少年に背を向けて、欠けて行く月を見つめた。
徐々に闇がその濃さを増して行く。
──…湖に映っていた光が、消えた。
「へー…」
表情は見えないが、ティオは感心している様だった。
「綺麗だね!」
「…まあね」
大して気に止める素振りもせず、ルックが答える。

──闇の帳の中を、暫し静寂が満たした。
「…月とルックは似てるよね」
「…は?」
突然口にする少年に驚きを隠せぬまま、続ける。
「…冷たいから、とでも言いたい訳?」
「違う違う」
見えていないと知りながら、僅かに首を振る。
「…あ、でもそれもあるかな」
「……へぇ」
苛立ちを滲ませたその声に少しも悪怯れずに、少年が答えた。
「月は、身体を暖めてはくれないけど
──行き先を照らしてくれるでしょ?其処が似てるかなって…」
少年の髪を靡かせた風が、トランの湖を渡って行く。

「…暖めてはくれない、ね…」
「え?」
「そうでもないと思うけど?」
ティオは隣の少年がふわりと動くのを感じた
──気がした。
────
風が一時強く吹いて、少年達の聲を掻き消した。
そのままざわざわと草群を渡って行く。
…闇の深い帳の下では、何が起こったのか、残念ながらお伝えし難い。

──…月が静かに、明かりを取り戻して行った。

 

 

 

きゃあああvvvありがとうございますvv描写が綺麗でもう(意味不明)本当にありがとうございますvv                              

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