浄化






天候の中でも雨は嫌われてる。
湿った空気に鬱陶しい気分に狩られるから。
そういう人は雨の日を嫌う。
嫌われたくて降ってくるわけでもないのに。






「今日ってもしかして雨降る?」


あと10分ほどで本日最後の授業も終わるというところで は隣の席の友達に声をかけられた。
それまでは特に気にもしていなかったのだが窓の外、空を見てみると確かに雲が暗かった。
今日の天気予報では確か1日中晴れるとか言っていたのに。


「このままだと授業終わるくらいに降ってくるんじゃないの。」


冷静に状況判断をした が友達に言葉を返すと彼女は本当に落ち込んだ表情を浮かべた。
雨に濡れるから。
ただそれだけの理由だろうが雨を嫌うにはそれだけで充分だった。


そしてそれから数分後———静かな音と対になって水粒が地へと落ちてきた。


それに応じ一気に教室がざわめきだす。
口々にいろいろなことを口走るが言うことはだいたい皆同じことだった。
そして授業が終わるチャイムも同じころに鳴り、生徒たちは教師よりも先に教室を後にした。
雨が静かなうちに家へと帰るために。
雨に濡れることを嫌ったために。









「これで良し、っと。」

放課後、皆は一目散に帰ったというのには1階にある部活動の連絡掲示板の前にいた。
自分の書いたことに間違いがないか再び眼を走らせ、満足したかのように笑みを浮かべていた。
『サッカー部:本日の部活動はお休みです。』


「書かなくても普通分かると思うけど?」


不意にの頭上から声が響いてきた。
その言葉が多少頭にきたが考えてみればその通りかもしれないとも遅れながら納得する。


「念のためにね。」


誰がいるか分かっているからこそ振り向きざまに笑顔を英士に向けた。
そして靴箱まで、と2人で並んで向かっていく。
しかしはふと疑問を浮かべた。


「そういえば英士はなんでまだ残ってたの?」


あの授業の後には教室には誰も残っていなかったしあれからもう時間も経っている。
雨が降っているのだから早く帰りたいのではないのか。


理由を聞きたかったは好奇心旺盛な瞳で英士を見つめた。
すると英士はからは見えないほうの手を差し出し、その手に持っているものの姿を露にした。


「さっき帰ろうとしたら思ったより雨が降ってたから教室に傘取りに行ってたんだよ。」

「今日の天気予報は晴れって言ってたのに…よく分かったね。」

そう、天気予報では雨の降る確率などないとまで言っていた。
だから皆は早く帰ったのだ。

「天気当てるの得意な方だし。」


靴を履き替えながら自信ありそうに言葉を放つ英士にはただ感心してしまった。
そしてそのまま帰ろうかというとき、外は弱まったもののまだ雨は降り続いていた。
小さな水粒が静かに。


は傘ないの?だったら一緒に入っていく?」


何も持たないに英士は自分の傘を差し出した。
2人で使えば多少は濡れてしまうかもしれないがないよりはましだ。
だが帰ってきたの答えは意外なものだった。


「ううん、大丈夫。私濡れて帰るから。」


傘を開いた英士は一瞬よく聞き取れなかった。
雨の音のせいもある。
それに今までこんなことを明るく言う人など知らなかったというのもあった。
言葉が返ってこない英士には一つの問いをかけた。


「英士は雨のこと嫌い?」


これはいつもが皆に対して思っていることだった。
雨が嫌いなのか、濡れることが嫌なのか。
それとも他に何かあるのか。
しかしそれに対しても英士からの答えはない。
その反応を見ては微笑を浮かべる。


「私は雨って好きだな。」


そう言いながらは雨の中へと歩き出した。
落ちてくる雨の粒を身体中で受け取っていく。


「雨に降られてると嫌なことや忘れたいこととか何でも流してくれる気がして。」


雨の中で英士の方を振り返り両手を大きく広げる。
そうすればもっと雨は当たるから。
全てを流してくれるから。


「すっきりするの。また明日も頑張ろうって思える。」


空を見上げ、手で舞い落ちてくる粒を優しく包み込む。
その表情からは嫌悪は微塵も見つからない。
心からそんなことを思っている、考えているからだということが英士には分かっていた。


「それで風邪引いたら元も子もないけど。」


楽しそうにするに英士は呆れたような言葉をかけた。
ただ…。
言葉と行動は一致していなかった。


「英士だって濡れてるじゃない。」


開いた傘を再び閉じ、それを手に持ったまま英士はのところへと向かっていった。
少しずつ雨が制服を濡らしていく。
にはその英士の行動が理解できなかった。
教室に傘を取りにいくくらいなのだから濡れたくはなかったはずだろう。
それなのに今、英士は自分から雨の中へと入ってきたから。
不思議な表情を浮かべずにいられないの正面まで来た英士は髪を掻き揚げながら笑った。


だけ濡らすのは俺が嫌だからね。」


そう言っての髪を撫で、再び微笑んだ。
雨のせいで視界も悪い。
からはその笑顔はよく捕えられなかった。
だが…。


「英士が?」

「そう、俺が。」


微笑を浮かべる英士に対しはクスクスと微笑んだ。
それから後、弱まった雨は次第に天へと昇り空には青が戻ってくることとなる。
晴れた日。
だが雨が降る前とは2人はどこか違っていた。


一度お互いに向かい合い微笑む。
そして2人はまだ雨の名残のある水溜まりを飛び越して並んで学校を後にした。







雨はもともと嫌いじゃなかった。
濡れるからとかそんなことはどうでもよかった。
ただ好きになる理由も見つからなかったんだ。
でもの言葉を聞いて———自分から雨に降られてみて。
こういう世界もあるんだって気がついた。
もっとのことが聞きたい。

そうすればの世界も見えるし…もっと君を好きになれる気がするから。





<あとがき>
16000ヒットのキリ番創作です。
英士偽者です。(涙)
タイトルも文章も意味不明ですみませんでした…。
こんなものでよかったら貰ってやってください。
葛葉さん16000ヒット踏んでいただいてありがとうございました!


ありがとうございますvv
そう言えば彼の特技は「勘による天気予報」だった事を思い出した私(遅)
英士さんが水が滴ってる素敵な人ですvv
素敵なお話どうもありがとうございましたvv


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