Barbed

 

 

 

 

ねえ知ってる?

人間だけなんだって、こんな習性があるのは。

他の動物は絶対にしないんだって。

どうしてそんな事出来るんだろうね?

 

 

 

 

「ねえ、ルック…」

ぱちん。

「何?」

ぱちん。

「聞いた事、あるかもしれないんだけどね?」

ぱちん。

「何?」

ぱちん。

「人間だけなんだって。仲間同士で、殺しちゃったりするのは」

ぱちん。

「ある意味で高等らしいからね。そのくせやる内容はばかばかしい」

ぱちん。

「どうして、そんな事、出来るんだろうね?」

ぱちん。

「………邪魔だからじゃないの?鬱陶しいとか、憎いとかね」

ぱちん。

「………でも僕も、そんな人の1人、なんだね」

ぱちん。

「………」

ぱちん。

「英雄って、何なのかなあ?」

ぱちん。

「何かをやり遂げた偉人。歴代の本に書かれて崇め奉られる存在」

ぱちん。

「でも、それはやっぱり、綺麗な言葉、だよね…?」

ぱちん。

「………そうかもしれないね」

ぱちん。

「僕はただ、僕から見て、敵になってる人を、殺しちゃってるだけ、なんだよ?」

ぱちん。

「そうしないと先には進めないけどね」

ぱちん。

「でも、僕はただ人の事、殺しちゃってる、だけだよね……」

ぱちん。

「言われたわけ?」

ぱちん。

「何を?」

「『英雄だなんて嘘だ。こいつはただの大量虐殺者じゃないか』」

ぱちん。

「…………葛葉はどう思ったわけ?」

ぱちん。

「………………本との事だって、思ったよ…?」

ぱちん。

「確かにね。そうしないと先には進めない。でも先に進もうと思えば犠牲者が出る。傷つけたくないけど傷なしの革命なんてありえない」

ぱちん。

「………」

ぱちん。

「葛葉?」

ぱちん。

「いい加減にしなよ」

「あ……」

音を立てて転がった爪切り。

真っ赤に染まっている指先でそれを拾い上げようとしたけれど、

その前に彼に取り上げられた。

 

 

「出来るだけ傷をつけたくないのは誰でも同じ」

口の中で小さく回復魔法を唱えて葛葉の指先を治そうとしたけれど、

その前に葛葉は手を引っ込めてしまって。

 

「傷が残るのはどの大きさの革命でも同じ」

 

傷つけたくないから傷つけないように自分を傷つけるの?

 

「人間は互いに傷つけあう事で自分を正当化しようとしてきた」

 

でも君が今している事は自己批判だけ。

わかってるよ、それが君の優しさだって。

でもそうじゃないんだよ?

 

「でも、君はその役割を除けば違うだろう?」

 

リーダーだという枷を取り外して、

『葛葉』という人間だけを見てごらんよ。

 

「大量虐殺者にはこんな感情はないよ」

「え?」

 

「だって君は現にこうしてるじゃないか」

 

「君のおかげで僕は傷つかない」

 

「君が爪を切ったのは、僕を傷つけない為だから」

 

 

ほら貸してごらん、と、

指先を柔らかい光で治して貰いながら、

それでもどうしてか涙が止まらなかった。

例えそうしていたとしても、

やっぱり誰かを自分では見えない棘で傷つけているのは、

それは自分が生きているからで、

自分が「人間」であるから。

 

 

 

きっとそれが人間であっても、

それが今の使命だとしても、

苦しいかもしれないけれどどうかその気持ちをなくしてしまわないで。

例え人間がそういう生き物であったとしても、

例えリーダーがそういう役割を負わないといけないとしても、

その棘を自分に向けて他人を傷つけようとしない、

その優しさを持っているのが「君」だと思うから。

 

 

 

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