Mysterious drop

 

 

 

どうしようかな。

手の中には綺麗な包み紙にくるまれた飴が一つ。

思わず貰ってしまったけれど。

どうしたものか悩んだ末に、彼はポケットの中に仕舞い込んだ。

 

 

 


遡る事1時間前。

エンジュの、「ユギさんを迎えに行く!」の一言で何故かパーティー入りが決定してついてきたものの、内心ではかなり帰りたかった。

ユギが嫌いなわけじゃない。

迎えに行くのは面倒臭いけど、会いたいから。

嫌だと感じている原因は今のパーティーメンバー。

フリック、カミュー、シーナ、サスケ……
言わずと知れた、ユギを狙う者ばかりだからである。

何度目になるかわからない溜息をつく。

マクドール家でユギに会った途端にパーティー内の空気が一変した。
エンジュは兄のように慕っているユギに一生懸命話を聞いてもらおうとくっついているし、

フリックはフリックで青雷のくせに普段より低めの甘い声でユギに話し掛け、

シーナは普段のナンパは止めてずっとユギの周りにいる。

サスケは何処か拗ねたような感じになりながらもみんなの会話に紛れ込もうとし、

カミューは薔薇をしょいかねない勢いで口説きに掛かる。

苛々する。

それならそれで先に帰るなり何なりすればいいのに、辛うじてそこにいる。

そう、ルックも隠してはいるものの、ユギがすきだから。

 

 

 

 

バナーの村に着いたのはもう夕方で。

ほぼ全員一致の意見で村の宿に泊まる事になった。

相変わらずユギは解放してもらえそうになく、久々という事で酒盛りに巻き込まれていた。

真の狙いが別にある事は、決して酔いつぶれる所までは飲もうとしていないエンジュとサスケ以外のメンツの顔から伺える事で。

馬鹿馬鹿しいから一杯だけ付き合って外に出た。

外の空気が冷たくて気持ちよくて、

ついでに自分が落ち着くまでは宿に戻らないでおこう、と決めて樹の根本に座り込んだ時、

「……あなた、何か悩み事をしているわね?」

どこか不思議な感じのする女性に声を掛けられた。

 

「あんた誰?」
ルックの冷たい一言にも堪えず、女性は微笑んだ。
「当ててあげましょうか。あなた、嫉妬してるんでしょう?」
自分の気持ちを言い当てられた事が滅多にないだけに、ルックは反論の言葉を飲み込んだ。

女性は僅かに屈み込んで、ルックに何かを差し出した。
「……これをね、あの子に食べさせてあげなさい。大丈夫、何の害もないから」
手の中に落とされた、綺麗な包み紙にくるまれた飴玉。
「食べさせてって……」

再び顔を上げた時には女性の姿はなくて。

返す事の出来ない、得体の知れないそれを、じっと見つめていた。

 

 

 

 

 

「……ルックは…?」
見た目によらずかなり酒に強いユギは、辺りを見回した。

既に時計の針は二時を指していて。

ユギを酔い潰そうとしていた面々は無念にもテーブルで寝息を立てている。

とりあえず眠ってしまっている一人一人を瞬きの紋章でそれぞれ部屋に飛ばして、外に出ようとした。
「……ユギ」
「あ、ルックだあ」
酒の所為でやや目が潤んでいるものの、

にっこり微笑んできたユギは可愛らしくて。

邪魔なんてないのだから一気に自分の気持ちを言ってしまえばいいのに。

――――そんな事言えない。

無情にも理性は感情に勝り。

しがみ付いてきたユギを部屋に送り届けて、また溜息をついた。

 

 

 

 

すぐには寝付けなくて、結局外に出てしまって。

奇しくもルックと同じように樹の根本に座っていたら、綺麗な女性に飴玉を貰った。
「あなたには何でもお見通しですね」
包みの中身を見て苦笑したユギに、女性も微笑んだ。
「……たまにはいいでしょうね」
女性と別れた後、ユギは明け方まで散々悩んだ挙げ句に、包みの中の飴玉を口に入れた。

 

 

 


朝食の時間になってもエンジュとサスケしかおらず。
「青いのと赤いのは?」
「まだみたい。ユギさん起こしに行こうかなあ……」
「……君、そんなケチャップだらけの手で行くつもり?」
むくれたエンジュを置いて、ルックはユギの部屋に向かった。

思えばユギは昔から低血圧で。

朝から会議がある時はたまに起こしに行った事もあって。
ふと思い出された過去に自嘲気味に笑うと小さくノックをしてドアを開けた。
「……ユギ?朝だよ」
「……んー……ルック…?」
半覚醒状態。

ルックはベット脇の椅子に座ると僅かに揺さぶった。
「ユギ。朝だよ」
夜中に言えなかった分を取り戻すかのように、

ユギの腕を肩に掛けて抱き起こして。

そのまますぐ離れるつもりだったけど、

ユギはルックの首に腕を回したまましがみ付いた。

 

 

「ユギ…?」

「……すきだよ」
ぽつんと呟くかのよう。

ルックは耳を疑った。
「……何?」
聞き返してきたルックに、ユギは顔を埋めてもう一度小声で言った。
「僕は、ルックがすきだよ」
女性に貰った飴玉はポケットの中のままだから、それの効果なんかではなくて。
「……すきだよ」
そのまま、華奢な体を抱き締めた。

 

 

 


朝食後、宿を立つ準備の為に部屋に戻ってきたユギはごみ箱の中から綺麗な包み紙を拾い上げた。
「………薬入ってなかったけど、おかげで言えたんだからよかったかな……ありがとうございます」

包み紙の裏には何やら注意書きが。


―――――これは自白剤入りです。

 

 

 

 

 

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