Shape of love

 

 

 

 

甘いものが苦手な事はわかってるけど、

それでもしたい事はある。

今更そんな行事に拘らなくてもいいんだろうけど、

ちゃんとしておきたいじゃない?

 

 

 

 

 

 

「ルック」

「何?」

声がした上方を見上げると軍主が大きな袋と小さな包みを持って嬉しそうに立っていて。

何が楽しいのかとやや呆れた視線を向けたけれど、

彼は気にする事なく階段を駆け下りて目の前にやってきた。

「はい、チョコレート」

小さな包みを差し出して。

「………あのさ、僕甘いもの嫌いなんだけど」

「大丈夫だよ、今年はちゃんとリッチモンドさんに聞いてビターチョコレートにしたから」

 

また無駄な事ばかりに労力を使っているように思えるのは気のせいか。

 

「………あ、そう」

押し付けられるままとりあえずその包みを受け取ったけれど。

「あ、それからこれがみんなからね。去年ルックに断られたからってみんなに押し付けられちゃって」

その大きな袋の中にはどれだけ入っているのだろう?

「やだね。君にあげるよ」

「え?だってこれはルック宛てのなんだよ?」

「さあね。だからこれも気持ちだけもらっとくよ。じゃあね」

 

彼はぶつぶつと文句を言っていたけれど。

適当にあしらって転移魔法でその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「ユギ」

「うん?あ、遅かったね、ルック」

思いついたのは彼の家。

「まあね。ユギも来ればいいのに」

「うん?まあ、そうだね」

 

曖昧に誤魔化して微笑んで。

彼に背を向けて何やらすると、

振り替えって湯気の立つマグカップを渡した。

 

「はい」

「何、これ?」

「うん?ルックは甘いもの嫌いだから、それだったらいいかなって」

 

そう言われてもう1度カップの中に目を落とす。

ココアの別名がホットチョコレートだという事に気がつくまでにそう時間は掛からなくて。

 

「頂くよ」

砂糖の入っていないそれを飲んだ。

「ほんとはね、ちゃんとしたのにしようかと思ったんだけど」

「思ったんだけど?」

「ルックたくさん貰うだろうし」

「つき返した」

「甘いもの嫌いだし」

「たまには食べるよ」

「貰って貰えないかもしれないし」

「じゃあ何で僕はここに来たわけ?」

「でも……」

 

婉曲な表現しか出来ないけれど。

 

「ユギのだったらちゃんと貰うから」

「もしあげなかったら?」

「行事はきちんとしてくれるユギがそんなわけがないね」

 

「………自信家」

「今更」

 

小さく悪態をついても嬉しいから効果はなくて。

 

「それだったらちゃんとしたのにしとけばよかった」

「いいよ。ちゃんと貰うから」

「え?」

「無理に押し込んだ気持ちよりそのままの方がすきだからね」

 

 

 

 

貰いたい相手からのものしか受け取りたくない。

それは君も知っていてくれていたと思ったけれど?

そんな世間に流されたお菓子よりも、

甘くて大事な君が1番欲しいよ。

君の気持ちはお菓子に頼らなくてもそれで十分わかるから。

 

 

 

 

 

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