For You

 

 

 

 

「私は死ぬまで葛葉様のお側にいますよ」

「ほんとに?」

「ええ。葛葉様の人生の何分の一かの時間で構いません、私は葛葉様のお側にいます」

「じゃあもしグレミオが死んじゃったら、僕はどうしたらいいの?」

「私の分まで、生きて下さい?私は葛葉様が望んで下されば、葛葉様のお側に転生して還ります」

「じゃあ、反対に僕が死んじゃったとしても、約束して?僕の分まで生きてくって」

「葛葉様」

「約束して?僕だけだなんて、ずるいよ、グレミオ?」

 

 

 

いつか、そんな想定をした話をした覚えがある。

お互いの気持ちを確かめ合うような、

お互いの気持ちを押し付けあうような、

それでも幸せな言葉。

同時に残酷な。

 

 

 

「ちゃんと帰ってくるから、待ってて?」

 

そう言い残して彼はいなくなった。

最愛の彼は、

同盟軍の最終決戦に協力した帰りに残党に刺し殺された。

それは赤月帝国の元帝国兵。

聞く所によれば彼は犯人の顔を見た途端、反撃の素振りすら見せなかったらしい。

まるで、死を望んでいたかのように。

 

 

 

そうでないのは知っていた。

彼が、自分の帝国兵への罪を今でも感じているのは知っていた。

だからこそ彼は反撃しなかったのだと。

それでも自分は思うのだ。

彼は自分を置いて行ったのだと。

あまりにも痛い彼の優しさを自分の悔しさで塗りつぶして。

 

 

 

まるでつられるかのように、

毒を飲んでみたりした。

雨の中を肺炎になるまで歩き続けてみたり、

崖から飛び降りてみたり、

手首を切ったり。

彼の側にいたいから、

彼との約束を破って彼の側へ行こうとした。

しかしまるでそれを拒むかのように、

優しい偶然というより残酷な必然性が、

自分を彼の側へ行かせようとしないのだ。

それは自殺行為を繰り返す自分に気づいて止めてくれる仲間が悪いのではなく、

恐らく自分はある意味酷く幸福な人間であってこういう状態になっているのだとしても、

まるで拒絶でもされているかのような。

 

 

彼がいなくなって気づいた。

自分も彼をかつてこうして言葉で縛った事があった事を。

「生きてくれ」と容易く自分の願いを口にして、

誰より優しく誰よりも大切な彼を酷く傷つけた。

今こうして彼の元へ還って来ていたとしても、

どれだけ孤独にしたかわからない。

変わり果てた彼を見て、どれだけ自分をふがいないと後から呪ったかわからない。

 

 

代わりなんていらない。

縛り付ける必要なんてない。

それでも自分は彼より先に朽ち果てていく恐怖があった。

世界中の何処からも自分が消えてしまった時、

彼が一人でいられる保証などなかったから。

だから縛り付けた。

光り輝く彼に死んで欲しくなかったから。

愛すべき彼を手が届かない所からででも見守っていたかったから。

でもそんなのは言い訳。

 

 

返して。

最愛の彼を返して。

死ねなくなってから、

死ぬ事を封じられてから初めて彼の気持ちがわかった。

 

止まる事を知らない涙と、

叫んでも届く事のない声と、

伸ばしても触れられない指先と、

すっぽり包み込めた小さな空間と。

 

 

自分は十字を背負いこれからも生きていく。

いつか彼の側へ行く事が許されるその日まで。

最愛の人よ、私はあなたを愛しているから、

願わくばまたあなたをこの腕で抱き締められる日まで私の事を忘れないで。

 

 

 

○あとがき

一部実話。洒落にならないほど暗くなってしまいました(汗)

残して死んでいく側は残される側の気持ちを計れない。残される側は、残して死んでいく側の気持ちが理解できない。

大事に思うのは同じでも………

 

 

 

 

 

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