Temptation
「くーちゃん」
「なあに?」
「暇」
「うん?シード、お仕事終わった?」
「まだ」
「うーん…もうちょっとがんばろ?」
「くーちゃんと一緒にいるのに何で仕事しなきゃ何ねえんだよ」
「でも、お仕事しないとちっとも片付かないよ?」
「いや、そりゃわかってるけどさ、折角一緒にいるんだし俺はくーちゃんと遊びたい」
「お仕事終わるの待ってるから、ね?」
そう微笑まれては何も言い返せない。
「…………はい」
そう返事して再び書類の山と向き合うものの一向に減らない。
やる気が起こらないから、すぐ側の椅子に座っている葛葉を見るけれど彼は一生懸命本を読んでいて。
つまらない。
「くーちゃん」
「なあに?」
「暇」
「うーん……」
もう今日だけで何度も繰り返される言葉に、葛葉は困ったように首をかしげた。
「くーちゃん」
腕を伸ばして膝の上に座らせて。
近くにいるのに触らせてもらえなかったから、折れそうに細い身体をこれでもかと抱きしめて。
「お仕事は…?」
不安そうに見上げてきたけれど。
「いい!もうやらねえ!」
そして抱きしめたまんま疲れて眠ってしまった。
「いいのかなあ……」
上手くシードの膝の上で身体の向きを変えて書類の山と向き合った。
一日がかりでシードがやったのはサインだけですむ書類ばかり。
「……お仕事なんて嫌いだよ……」
小さくつぶやいた言葉は誰にも聞かれないまま。
翌朝提出のはずのその書類は空欄ばかりで。
低血圧の葛葉が起きるまでに仕上げろという命令を頂いた上に葛葉を取り上げられたのは言うまでもない。
○あとがき
だから何なんだ、とか(汗)
基本的にシードさんはくーちゃんをお城に連れてってそうだなあと。
?→くーちゃんの図が微妙に入ってて厄介。たまにはこういう平和なのも書きたいのです(謎)