軌跡の果て

 

どこまでも続く石畳の道。
周りに広がる草原。
頬を撫でていく風はとても優しい。


「ユギ」
……何?」
声を掛けた少年は、抱え切れんほどの花束を持っていて。
「どこに行く?」
……一緒に来る?」
そう尋ね返してきた少年は酷く淋しそうで。
頷くと、二人でその道を歩き始めた。


「遠いよ?仕事はいいの?」
いつも仕事仕事とうるさい自分が彼について歩くのは、珍しい事。
「ああ……だが、どこまで行くんだ?」

「うん、もう少し」

本当はよくないけれど。
折角の花束なのに、彼の顔は浮かないから。
それに、その花は……

話にだけは聞いた事がある湖の古城。
自分が一緒にいるからか、途中で移動方法を転移魔法に切り替えた少年は、ずんずん奥に進んでいく。
今はもう誰もいないが、しかし手入れだけは欠かさずに行われているらしい。
三年前と変わらぬままの廊下を歩くと、とある部屋の前で立ち止まった。
「ちょっと待ってて」
彼の返事を待たず、少年はその部屋を律儀にノックして入るとしばらくして戻ってきた。

花束の花が僅かに減っているのは気のせいか。
………じゃあ、行こうか」


「そろそろ、どこに行くのかくらい話してくれ」
古城を出て再び転移魔法で移動して。
ついたところは、どこまでも続く石畳と、草原。

……ここは……
……ここは、マッシュのお墓だよ」
一番立派な墓標に進む。
……本当は戦争が済んですぐ来るはずだった……でも来られなかった
……何故?」
………僕はマッシュに合わせる顔がなかったから」
少年は墓標の前にしゃがみこむと、花束を大事そうに捧げた。
……でもそれは逃げてただけ……僕は報告すらしてなかったのに……


青年はただ、かつての師の墓標を見つめるだけ。
三年前、解放軍に勝利をもたらし、アップルをあそこまで育て上げた、師。
最後まで自分は師に背いてばかりいて。
アップルに師の逝去を聞かされても墓にこようとはしなかった。
それはまた自分も、逃げていたから。

 

……マッシュ僕達は、勝ったよ。あなたのおかげだよ……報告が遅くなってごめん」
僅かに見えた少年の横顔は、英雄とたたえられたリーダーとしてのもの。

………それから……助けられなくてごめん。何も出来なくてごめん。心配掛けさせてごめん。逃げて、ごめん………


少年の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「ユギ」
青年は歩み寄るとハンカチを差し出して。
けれどユギは、首を振って受け取らなかった。
………でも……あなたが後悔していないように僕も、リーダーになった事を後悔なんてしてないから……
無理に目をこすって涙をこらえて微笑む。
………本当にありがとう。御疲れ様でした」「ユギ」
今度こそ報告を終えたユギに、手を差し出した。
……ごめん、泣くつもりはなかったんだけど」

「いや……

改めて、師の大きさを知って。
自分には出来る?
彼が成し遂げた事を、自分にも出来る?

否、やってみせる。

………また来るよ」
……そうだな」


もう今となっては届かないけれど。
本当は、あなたに今のトランを見せたかった。
本当は、あなたを助けたかった。
でもあなたが後悔していないのなら、僕も後悔しないから。

……御疲れ様でした、ユギ殿……
そう、聞こえた気が、した。

 

 

      あとがき

シュウさんに対するユギさんの言葉遣いが自分の中でまだ定まっていないらしい……いかん、いかん。                   

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