色褪せない探しもの

 

 

 

 

「無事でいたようだな……」

そう声を掛けられた時、とっさにその人の名前が出てこなかった。

「……うん」

それだけを慌てて答えると、ほんの僅かに声を掛けた人物は微笑んだ。

 

誰だったっけ?

 

必死になって思い出そうとしながらエンジュ達の後ろを歩いていた時、エンジュがその人物に声を掛けた。

「クライブさん、おくすりまだ持ってますか?」

「ああ」

クライブ?

最終決戦前に仲間になってくれた……?

しかし彼とは話をした覚えなど殆どなくて。

それから三年という月日が流れているのだから、思い出せなくても仕方のない事なのかもしれなかった。

 

 

 

「すみません、ユギさん。人を探してるんで、お城にいく前にもう一ヶ所寄る所がありますけどいいですか?」

エンジュが振り返って聞いてくる。

三年前を思い出していたユギは現実に引き戻された。

「人を?」

「はい。クライブさんが、エルザっていう人を探してるんです」

それを聞いて思い出した。

 

―――三年前も、彼はその名前の人物を探していなかった?

 

「なんか、ラダトにいるらしいんですけどね。どうなんだろう。急ぎましょう!」

 

 

 

同行していたビッキーの魔法でラダトの酒場に行くと、エルザという女性がいた。

何を言われても彼は必死になっていて。

言い争いが講じて撃ち合いになった時、クライブが撃たれて倒れた。

「クライブさん!?」

いきなりの事に動転し掛けたが、とにかく彼を本拠地の医務室に連れて行く事にした。

 

 

 

「……大丈夫ですよ。『弾』は急所を逸れていましたから」

心配そうにクライブを見るエンジュ達にホウアンが微笑む。

それを聞いて安堵した時、クライブが目を開けた。

「……よかったね…弾逸れてて……」

そう言うと、クライブは小さく溜息をついた。

「ユギ……話がある……」

「話?」

不思議そうに聞いたユギに頷く。

エンジュ達を見ると、気を利かせてか皆医務室を出て行った。

ユギは椅子を引っ張ってくると、クライブが寝ているベットの側に座った。

「……あの人が…エルザさん?」

「そうだ……」

「やっと、追いつけたのに……」

 

「ああ……だが、俺が探していたのはあいつではない」

 

「え…?」

「……俺が…三年間探していたのはお前だ……」

「僕?」

わけがわからない、という顔をするユギに、クライブは小さく微笑んだ。

 

「……俺は…あいつを憎む事で生きていた……一人でいたから、それ以外の事は考えられなかった。

だが三年前お前の仲間になって、ほんの僅かな時間だったが俺は憎む以外の感情があった。

お前は覚えていないだろうが…お前が俺に話し掛けてきた時、温かいと思った……

だがそれが何なのかわからなくて……お前に会えばわかると思ってお前を探していた……」

 

何も覚えていない自分を敵を後回しにして探してくれていた人がいた。

その事に、ユギは涙が出そうになって小さく俯いた。

「……僕に会って……わかった?」

「いや……だが…温かいと感じるのは変わらないな……」

「そう?」

ユギは小さく微笑む。

同じ温かさを感じたから。

それが一体何なのか、今はよくわからないけれど。

距離が縮まった感触。

 

三年前に止まっていた時計が、小さく音を立てて動き出した。

 

 

      あとがき

最初で最後のクライブ坊。リクを頂いた当時、これを書くのに一週間かけた憶えが……

クライブ×エルザPUSHの方々を敵に回す駄文だなあ……

 

 

 

 

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